韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は2026年10月2日、北朝鮮兵の捕虜を韓国へ移送したことを公表したウクライナのゼレンスキー大統領に対し、公開謝罪を求める姿勢を鮮明にしました。謝罪や事実認定が拒否される場合には「追加措置」を講じると警告しており、両国間の外交的な緊張が高まっています。
事端となった北朝鮮兵の移送公表
今回の対立の端端にあるのは、ロシア側で戦っていた際に捕虜となった北朝鮮兵2人の扱いです。ウクライナのゼレンスキー大統領は、9月に開かれた国連総会の演説において、これら2人の兵士を韓国に移送したことを明らかにしました。
これに対し韓国側は、さまざまなルートを通じて、移送については「非公開」とすることで合意していたと主張しています。韓国側は、兵士の身の安全を守るために非公開とする合意があったにもかかわらず、ウクライナ側が一方的に公表したとして非難し、公式な謝罪を求めてきました。
一方、ウクライナ当局者は、そのような合意は存在しないと反論しており、事実関係を巡って両国の主張が真っ向から対立する形となっています。
李在明大統領による強い不信感と警告
李在明大統領は、SNSのX(旧ツイッター)などを通じて、ウクライナ側への不信感をあらわにしています。李氏は「(ウクライナ側が)合意の事実はないとして、相手国(韓国)の国家元首をうそつきに仕立て上げた」と主張し、怒りをあらわにしました。
また、ウクライナ側が、韓国と北朝鮮の間で軍事衝突が差し迫っている旨の発言をしたことについても、朝鮮半島での戦争をあおるものであるとして「深い遺憾」を表明しています。
李大統領は、今回の件を「国民と国家の威信に関わる問題であり、看過することはできない」と述べ、「事実認定と公開謝罪を引き続き拒否するなら、追加措置を講じる」と強く警告しました。
「追加措置」の中身と背景にある事情
李大統領が言及した「追加措置」について、具体的な内容は明示されていません。しかし、専門家の分析や報道によれば、いくつかの可能性が指摘されています。
韓国統一研究院のチョ・ハンボム上級研究員は、追加措置が取られる場合、人道・財政・復興支援など、韓国がすでに提供している支援に関するものになる可能性が最も高いと指摘しています。韓国は2022年のロシアによる侵攻以降、ウクライナに人道および財政支援を提供しており、2026年7月の北大洋条約機構(NATO)首脳会議では、殺傷力のある兵器を含まない支援として1億ドルの追加拠出を表明していました。そのため、こうした支援の停止や縮小につながる可能性が考えられます。
また、李大統領がこれほど強硬な姿勢を示す背景には、韓国国内の世論があるともみられています。国内では、李大統領が北朝鮮への配慮から移送の事実を隠そうとしたのではないかという批判が出ており、それに反論する形で強硬な姿勢を示しているとの見方があります。
今後の見通しと外交的リスク
一方で、対立が深まることによるリスクも懸念されています。チョ・ハンボム氏は、対立が長引けばどちらの利益にもならないと述べており、韓国側が北朝鮮の軍事活動に関する情報をウクライナに依存しているという側面を指摘しています。
現時点では、韓国政府高官が、趙顕(チョ・ヒョン)外相とシビハ外相が問題解決に向けて連絡を取り合っており、謝罪を含めた発表方法について調整していると説明しています。
ゼレンスキー大統領が移送を公表した意図については、韓国国内でウクライナへの支援を拡大すべきという世論を高める期待があったのではないかという分析も出ています。
兵士の身の安全に関わる問題という点では、北朝鮮に残された捕虜の家族が北朝鮮政府から迫害される恐れも指摘されており、単なる外交上の駆け引きに留まらない深刻な人道上の懸念も含まれています。
出典 日本経済新聞 日テレNEWS フジテレビ 韓国大統領、ウクライナに追加措置警告 北朝鮮兵の移送公表巡り
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