2026年末に2期10年の任期満了を迎えるアントニオ・グテレス国連事務総長が、22日に国連総会の一般討論において最後の演説を行いました。グテレスさんは、深刻化する世界の分断に強く警鐘を鳴らし、国連主導で各国が協調する多国間体制を再構築すべきだと訴えています。
「万能ではない」超大国への問いかけ
グテレスさんは今回の演説で、世界を支配する「力」をテーマに語りました。特に、世界の多極化が進むなかで超大国が対立ではなく協調を選ぶ必要性に触れ、「未来を築く一歩は、超大国が自らの力がそれほど万能ではないことを認識することから始まる」と述べています。
また、「いかなる大国も単独で課題解決はできない」として、大国同士の連帯と協調の重要性を強調しました。
10年の任期と直面した「世界の亀裂」
グテレスさんがこの10年間を振り返ると、その任期中にはロシアによるウクライナ侵攻や中東危機など、多くの深刻な危機に直面してきました。グテレスさんは、この10年で「世界の亀裂は広がり続け、割れ目は峡谷と化した」と指摘しています。
こうした危機への対応において、国連の中心的役割を担う安全保障理事会(安保理)が機能不全に陥っている現状があります。読売新聞によれば、常任理事国である中国やロシアと、米国の対立などが要因となっていると報じられています。
紛争収束とAIリスクへの警鐘
演説では、具体的な地域紛争への言及もありました。中東情勢については、米イランの戦闘やイエメン情勢などを念頭に「紛争が連鎖的に広がっている」と危機感を示し、「戦闘をやめるべきだ」と強調しています。また、パレスチナ自治区ガザ情勢における民間人の犠牲者が増え続けていることや、同自治区の「壊滅的な状況」を看過してはならないとし、イスラエルによるヨルダン川西岸での入植地拡大を批判しました。
さらに、現代的な課題としてAI(人工知能)への対応についても触れています。AIが人類の存亡に及ぼすリスクについてAI開発者らが警鐘を鳴らしているなか、国際的な規範づくりの在り方について言及し、AI対応の緊急性を訴える構えを見せています。
不透明な後任選出と国際秩序の先行き
グテレスさんの退任に向けた後任の選出作業が進んでいますが、その先行きには不透明感が出ています。
候補の一人であったチリのミチェル・バチェレ元大統領は19日に撤退を表明しました。バチェレさんは人工妊娠中絶の権利を擁護するリベラルな姿勢で知られており、米国が「懸念」を表明していたことが影響した可能性が指摘されています。バチェレさんは撤退にあたり、「多国間主義といった原則に強い逆風が吹いている」と述べています。
また、自国第一主義を掲げるトランプ米大統領の存在もあり、各国首脳の視線はそこに集まっています。国際危機グループの国連担当であるリチャード・ゴーワン氏は、グテレスさんの退任後に「米国やその他の主要国が国連の権威を損なうこと」を懸念していると報じられています。
グテレスさんは、退任後も「国連憲章の価値を守るため声を上げ続ける」としており、多国間主義への逆風が強まるなかで、どのようなリーダーシップが次代に引き継がれるのかが注目されています。
出典 読売新聞オンライン 日本経済新聞 産経新聞 国連総長、AI対応訴え 各国首脳に紛争収束要求(共同通信)|dメニューニュース(NTTドコモ)
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