米国テネシー州で死刑執行が試みられたものの、失敗して生き延びたクリスタ・パイク死刑囚が意識を取り戻し、話ができる状態になっていることが分かりました。弁護団が声明で明らかにしたものです。
パイク死刑囚は、病院での治療中に意識を回復し、10月6日には「ここはどこ」「あなたは誰」と発したと報じられています。脳死状態になると予測されていましたが、現在は混乱と怒りを感じている状態にあるとされています。
死刑執行時に何が起きたのか
事態が起きたのは2026年9月30日の夜でした。パイク死刑囚に対し、刑務所の職員が致死量とされる鎮静薬ペントバルビタールを2度投与しましたが、絶命しませんでした。
報道によると、執行現場では静脈注射のルート確保に激しく難航したとされています。医療スタッフは1時間近くかけて、少なくとも7回針を刺して血管を破裂させたといいます。この際、強アルカリ性の致死薬により、パイク死刑囚は「腕が破裂しそうに痛い」と絶叫したと伝えられています。
パイク死刑囚の弁護団は、執行前から彼女が細い血管を持ち、血液凝固に影響を与える血小板増加症を患っているため、静脈注射の経路確保は医学的に困難な状態にあると州側に警告していました。しかし、州当局は執行を強行したとロイター通信が報じています。
パイク死刑囚の弁護団が雇った麻酔科医のジョエル・ジヴォット医師は、致死性の化学物質が血流ではなく皮膚の下の組織に広がった可能性があることを示唆しています。
事件の背景とパイク死刑囚の経歴
クリスタ・パイク死刑囚は、1995年に当時19歳のコリーン・スレマーさんを殺害した罪で死刑判決を受けました。当時の報道によると、当時18歳だったパイクさんは、交際相手の男らと共にスレマーさんを森に連れ出し、拷問を加えて殺害したとされています。その手口は、頭蓋骨を砕き、胸に五芒星(ペンタグラム)を刻むという残虐なものでした。
この裁判は、当時の米国で起きていた「サタニック・パニック(悪魔崇拝恐慌)」の影響を受けていたとされています。パイク死刑囚はテネシー州で200年ぶりに処刑される女性になるはずでした。
州政府の対応と今後の法的争点
この執行失敗を受けて、テネシー州のビル・リー知事は、ナッシュビルにあるリバーベンド最高警備刑務所で起きた出来事について独立した立場からの検証を指示しました。あわせて、州で次に予定されていた死刑執行を一時停止し、州矯正局トップの辞任を発表しています。
今後のパイク死刑囚の運命については、法的に不確実な状態が続いています。弁護団はリー知事に対し、仮釈放の可能性のない終身刑への減刑を求めています。
一方で、今後の執行方法をめぐっては激しい議論が起きています。テネシー州を代表する弁護士は、新たな執行日の設定は州最高裁判所の管轄事項であると述べています。また、共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員は電気椅子の復活を、ティム・バーチェット下院議員は絞首刑を復活させる法案の提出を主張しています。
しかし、法的なハードルは高いとみられています。テネシー州で活動するスティーブン・ロス・ジョンソン弁護士は、州が同じ手法を使い続けるなら重大な法的障害に直面すると主張しています。また、ヴァンダービルト大学のクリス・スロボギン法学教授は、処刑失敗後に脳に損傷を受けた可能性があるとして、執行の理由を理解できない精神状態の人物を処刑することは残酷で異常な刑罰とみなされる可能性があると説明しています。
米国で死刑執行が最後まで実施されながら生き延びた例は、弁護団によればパイク死刑囚だけであるとされています。この異例の事態は、米国の死刑制度そのものを揺るがす議論へと発展しています。
出典 CNN ZAKZAK 死刑執行の失敗後、死刑囚クリスタ・パイクの運命はどうなるのだろうか?
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