文部科学省が、外国人の在留資格取得などに広く利用されている「日本語能力試験(JLPT)」の応募者が急増し、運営が困難な状況にあるとして、全国の認定日本語教育機関に対し、初めて代替試験の活用を検討するよう要請したことが報じられています。
深刻な応募者の急増と運営の現状
日本語能力試験(JLPT)は、日本国際教育支援協会と国際交流基金が主催し、年に2回実施されている代表的な日本語試験です。政府はこの試験結果を、外国人の日本語能力レベルを判断する基準として活用しており、在留資格の取得だけでなく、就職や進学の要件としても幅広く利用されています。
しかし、新型コロナウイルス禍以降、年間の応募者はほぼ数十万人単位で増加しました。佐賀新聞の報道によると、今年7月実施分では国内外合わせて94万3671人(速報値)に達し、7月分として過去最多を記録したとのことです。
この急激な需要増に対し、運営側が対応しきれなくなっている実態が浮き彫りになっています。7月分に続き、12月分の試験についても急増に対応できず、申し込みが前倒しで締め切られる事態となりました。
なぜ今、応募者が急増しているのか
応募者が急増している背景には、政府による在留資格の要件変更があるとう指摘されています。西日本新聞などは、政府が昨年10月以降、一部の在留資格に日本語能力の要件を追加したことが影響していると報じています。
現在、政府は日本語の熟達度をA1からC2の6段階で区別し、日本語要件の基準としています。例えば、在留資格「特定技能1号」の場合、A2相当が要件となっており、具体的にはJLPTでN4以上、あるいは国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)で200点以上が求められる仕組みです。
このように、在留資格の取得に日本語能力の要件が課されることで、受験者が増加することは避けられない状況であったと考えられます。
代替試験活用のハードルと課題
文部科学省は認定日本語教育機関へ代替試験の検討を要請しましたが、実際にスムーズに移行できるかは不透明な状況です。
現在、在留資格の取得に利用できる日本語試験はJLPTが中心となっており、他にも国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)など10種類以上の試験が存在します。しかし、それぞれの試験が対応する在留資格は異なっており、体系が「ばらばらの状態」になっていると指摘されています。さらに、全ての要件に対応できるのはJLPTのみである場合もあり、他の試験で単純に代替できるとは限らないという課題があります。
また、JLPTの代替先として考えられる他の試験にも影響が出始めています。例えば「J.TEST実用日本語検定」の11月試験では、すでに多数の応募が集まっており、主催者がホームページで早期締め切りの可能性を告知する事態となっています。
専門家による指摘
こうした状況について、外国人政策に詳しい神戸大学大学院の斉藤善久准教授は、「在留資格取得に日本語能力の要件を課せば受験者が増加することは予想できたはずだ」と述べています。また、「試験には人生が懸かっている人もおり、国は責任を持って試験を運営し、申し込めば誰でも受験できる環境を整備すべきだ」と、国側の責任ある対応を求めています。
在留外国人が増加し、日本語能力の証明が人生を左右する重要な要件となっているなかで、試験運営のキャパシティ不足という構造的な問題が表面化した形となります。
出典 福井新聞 西日本新聞 佐賀新聞 琉球新報 南日本新聞 【独自】「日本語能力試験」の応募者急増 文科省、代替活用を初要請 共同通信
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