高市早苗首相が、ニューヨークの国連本部で開催された国連総会の一般討論演説において、国連憲章に残る「旧敵国条項」の早急な削除を訴えました。この発言に対し、中国側が反発する事態となっています。
高市首相による演説の内容と狙い
高市首相は2026年9月22日(日本時間23日)の演説で、「旧敵国条項は早急に削除されるべきです。70年間にわたり国連の取り組みに大きく貢献してきた日本の誇りと名誉にかけて、強く申し上げておきます」と強調しました。
また、安全保障理事会(安保理)の改革についても言及し、「安保理の現在の構図は1945年当時の国際情勢を反映したものであり、現代の国際社会を真に反映した構造へと変革することが急務」と述べたと報じられています。
外務省によると、日本の首相が国連演説で旧敵国条項について言及したのは、当時の小泉純一郎首相以来、高市首相が初めてということになります。
「旧敵国条項」とは何か
旧敵国条項とは、第二次世界大戦の「敵国」に対し、安保理の許可を要することなく直接軍事行動を取る権利を有することを定めた規定です。日本以外の旧敵国には、ドイツ、イタリア、ルーマニア、ハンガリー、ブルガリア、フィンランドが含まれるとされています。
この条項を巡っては、2005年の国連総会において、中国を含む全会一致で削除方針を盛り込んだ成果文書の決議が採択されました。しかし、実際の削除はいまだに実現していません。
中国による反発と日中の対立背景
今回の高市首相の訴えに対し、中国外務省の郭嘉昆報道官は記者会見で、「(敵国条項は)現在もなお重要な現実的意義がある」と主張し、反論しました。あわせて、日本に対し「歴史を鑑とし、深く反省し、実際の行動によってアジア近隣諸国と国際社会の信頼を得るよう促す」と述べています。
中国側がこの条項を持ち出し始めた背景には、高市首相の「台湾有事」を巡る発言への反発があるといわれています。昨年の高市首相の答弁を受け、在日中国大使館はX(旧ツイッター)にて、「(旧敵国が)侵略政策に向けた行動を取れば直接軍事行動を取る権利を有する」と投稿し、日本を牽制しました。その後も中国外務省は、条項の「拘束力」や、53条、77条、107条などが「今なお有効だ」と繰り返し主張しています。
これに対し日本政府は、これまで「死文化した規定がいまだ有効であるかのような発信は、国連において既に行われた判断と相いれない」と反論してきました。
なぜ削除が進まないのか
旧敵国条項の削除が実現しない主な要因は、国連憲章の改正手続きにあるとみられています。
外務省国連課の古永誠首席事務官は、1995年の国連総会決議で同条項が「死文化している」と認識しているとしつつ、国連憲章改正の議論が常任理事国枠の拡大や拒否権などを巡ってまとまっていない点を指摘しています。旧敵国条項の削除だけを目的に憲章を改正することは考えにくく、現実的なハードルが高いとされています。
また、仮に総会で削除が決まったとしても、安保理の常任理事国である中国やロシアが拒否権を行使する可能性が高いとの見方もあります。
政府の立場と今後の影響
外務省側は、高市首相の演説内容は「政府方針と一致している」としています。古永首席事務官は、「国連憲章からの削除も政府として求め続けており、首相の演説内容は政府方針と一致している」と述べ、政府としてサポートしていく方針を示しています。
一方で、理論上は日本と中国に武力衝突が起きた際、中国側がこの条項を利用して安保理の承諾なく武力行使を正当化することが可能であるという指摘もあります。ただし、米国との武力衝突を避けるため、中国が一方的にこの条項を用いて武力行使することはないだろうとの見方もあります。
日本は安保理の常任理事国ではないものの、国連への分担金を年間367億円支払っており、米国、中国に次いで世界3位となっています。ロシアなどの他国が日本の軍国主義的な傾向に触れて常任理事国入りに反対するなど、国連内における日本の立ち位置や、条項の削除を巡る外交的な駆け引きが今後も注目されます。
出典 東京新聞 フジテレビ 産経新聞 日本経済新聞 国連と共に平和と繁栄に貢献高市総理が国連総会で演説 | お知らせ | ニュース | 自由民主党 「敵国条項」をいつまでも削除しない国連から、なぜ脱退してはいけないのか。高市総理はリーダーシップを示せ(FNNプライムオンライン(フジテレビ系)) 高市首相、国連で削除訴えた「旧敵国条項」 中国も賛成したのに…対日牽制に利用 | Japan Forward
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