私がネットワークスペシャリスト試験で独学と通信講座を両方試した結果
私は2022年にネットワークスペシャリスト試験に挑戦した際、最初は独学で始めましたが、途中で通信講座も併用するという少し変わった学習経路を辿りました。結果として合格できましたが、この経験から得た両方のメリット・デメリットを具体的にお伝えします。
独学での挑戦:3ヶ月間の奮闘記録
最初の3ヶ月間は完全に独学でネットワークスペシャリストの勉強を進めました。使用したのは定番の参考書2冊と過去問題集です。学習時間は平日2時間、休日4時間で計算すると月約80時間、3ヶ月で約240時間を投入しました。
独学の最大のメリットはコストパフォーマンスの良さでした。書籍代約1万円で済み、自分のペースで進められるため、得意分野は飛ばして苦手なTCP/IPプロトコル※1の部分に時間を集中できました。

しかし、3ヶ月目に受けた模擬試験で午後II問題の得点が40点台という厳しい現実に直面しました。特に記述式問題では、技術的な理解はできているのに、採点者が求める回答形式で書けていないことが判明しました。
通信講座との併用:残り2ヶ月の戦略転換
危機感を感じて、試験4ヶ月前から大手IT系通信講座を受講開始しました。月額制で約2万円の追加投資でしたが、この判断が合格の決め手となりました。
通信講座の最大の価値は体系的な午後対策でした。特に重要だったのは以下の3点です:
– 記述式回答のテンプレート化:「〜の観点から」「〜を考慮して」など、採点者に伝わりやすい文章構造を学習
– 時間配分の具体的指導:午後I(90分)では問1に40分、問2・3に各25分という明確な時間管理
– 頻出論点の優先順位付け:過去10年間の出題傾向から、ルーティング※2とセキュリティ分野に学習時間の60%を配分する戦略
両方を経験して分かった学習効率の違い
結果的に総学習時間は約400時間(独学240時間+通信講座併用160時間)、総費用は約5万円でした。独学だけでは恐らく合格は困難だったと振り返っています。
最も印象的だったのは、同じ過去問を解いても通信講座受講後は解答の質が明らかに向上したことです。例えば「ネットワーク障害の原因特定手順」を問う問題で、独学時代は技術的な推測を羅列していましたが、講座で学んだ論理的な切り分け手順を使うことで、部分点を確実に獲得できるようになりました。
次のセクションでは、この経験を踏まえて具体的な学習方法の選び方について詳しく解説していきます。
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※1 TCP/IPプロトコル:インターネット通信の基盤となる通信規約
※2 ルーティング:ネットワーク上でデータの最適な経路を決定する技術
独学でネットワークスペシャリストを目指すべき人の特徴
私が実際にネットワークスペシャリスト試験を受験する際、最初に悩んだのが「独学で挑戦するか、通信講座を受講するか」という選択でした。結論から言うと、独学でも十分に合格は可能ですが、向き不向きがあることを身をもって実感しました。
自己管理能力と継続力がある人

独学でネットワークスペシャリストを目指すなら、最も重要なのは自己管理能力です。私の場合、毎日2時間の学習時間を6ヶ月間継続しましたが、途中で挫折しそうになったことが何度もありました。
特に、OSI参照モデル※1やTCP/IPプロトコル※2の理解に苦戦した時期は、1週間ほど勉強が手につかない状態が続きました。しかし、学習計画を見直し、理解できない部分を細分化して取り組むことで乗り越えることができました。
通信講座と違い、独学では誰も進捗を管理してくれません。私は以下のような方法で自己管理を徹底しました:
– 毎日の学習時間をスマホアプリで記録
– 週単位での達成目標を設定
– 理解度を5段階で自己評価
基礎的なIT知識を既に持っている人
独学でネットワークスペシャリストに挑戦する場合、基本情報技術者試験レベルの知識があると大幅に有利です。私は大学でコンピュータサイエンスを専攻していたため、プロトコルやネットワーク構成の基本概念は理解していました。
しかし、同じ時期に受験した友人(文系出身)は、独学での学習に非常に苦労していました。彼は結局、通信講座に切り替えて翌年合格を果たしています。
具体的には、以下の知識があると独学でもスムーズに進められます:
– IPアドレスとサブネットの基本概念
– ルーティングの仕組み
– セキュリティの基礎知識
– データベースの基本操作
情報収集能力と問題解決力がある人
独学では分からない部分を自力で解決する必要があります。私が実際に活用した情報収集方法は以下の通りです:
オンラインリソースの活用
– 技術系フォーラムでの質問投稿
– YouTube動画での概念理解
– 公式RFC※3文書の参照
– 過去問解説サイトの活用
実践的な学習環境の構築
私は自宅にラボ環境を構築し、実際にネットワーク設定を試しながら学習しました。中古のルーターとスイッチを購入し、約3万円で小規模なネットワーク環境を作成。この投資により、理論だけでは理解しにくいVLAN※4設定やルーティングプロトコルの動作を体感できました。
経済的な制約がある人
通信講座の受講料は一般的に10万円〜20万円程度かかりますが、独学なら参考書代だけで済みます。私の場合、以下の教材費で合格を達成しました:
– 参考書3冊:約1万2000円
– 過去問題集:約3000円
– オンライン模擬試験:約5000円
– 総額:約2万円

ただし、時間的コストを考慮すると、独学は必ずしも経済的とは言えません。私は合格まで約480時間(2時間×6ヶ月×40日)を要しましたが、通信講座受講者の平均学習時間は約300時間程度と言われています。
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※1 OSI参照モデル:ネットワーク通信を7つの階層に分けて整理した国際標準規格
※2 TCP/IPプロトコル:インターネットで使用される通信プロトコルの総称
※3 RFC:インターネット技術の標準仕様を定めた文書
※4 VLAN:物理的に同じネットワーク機器上で論理的に分離されたネットワーク
通信講座が向いている受験者のタイプとは
私の経験から言うと、通信講座が最適な選択となる受験者には明確な特徴があります。実際に私自身も最初は独学でスタートしましたが、途中で通信講座に切り替えた経緯があり、その判断基準をお伝えします。
学習時間の確保が困難な社会人
最も通信講座が効果を発揮するのは、まとまった学習時間の確保が困難な社会人です。私が通信講座を選んだ最大の理由もここにありました。独学でネットワークスペシャリストを目指していた当初、仕事が忙しく、帰宅後に参考書を開いても集中力が続かない日々が続きました。
通信講座の場合、1回の講義が30分から1時間程度に区切られており、通勤時間や昼休みなどの細切れ時間を有効活用できます。私が受講した講座では、スマートフォンアプリで動画視聴が可能だったため、電車内でも学習を継続できました。実際に、平日は通勤時間の往復2時間、土日は各2時間程度の学習で、3ヶ月間で合格レベルに到達できました。
IT基礎知識に不安がある初学者
IT業界未経験者や基礎知識に不安がある方にとって、通信講座は特に価値が高いと感じています。ネットワークスペシャリスト試験では、OSI参照モデル※1やTCP/IPプロトコル※2など、基礎概念の理解が不可欠です。
独学の場合、これらの概念を参考書だけで理解するのは困難で、私も最初は「なぜこの設定が必要なのか」という根本的な部分で躓きました。通信講座では、講師が実際のネットワーク構築例を交えながら説明してくれるため、理論と実践の繋がりが明確になります。
特に午後問題で出題される「ネットワーク設計」や「障害対応」については、実務経験がない場合、独学では解答の根拠を理解するのが困難です。通信講座の解説動画では、なぜその選択肢が正解なのか、実際の現場ではどのような判断基準で決定するのかまで説明されており、理解度が大幅に向上しました。
効率的な学習順序を求める人
ネットワークスペシャリスト試験の学習範囲は非常に広く、学習順序を間違えると効率が大幅に低下します。私が独学で失敗した最大の原因は、この学習順序の設定ミスでした。
通信講座では、カリキュラムが体系的に組まれており、基礎から応用へと段階的に学習が進みます。例えば、私が受講した講座では以下の順序で進行しました:
– 第1段階:ネットワーク基礎理論(2週間)
– 第2段階:プロトコル詳細(3週間)
– 第3段階:セキュリティ技術(2週間)
– 第4段階:午後問題演習(4週間)
– 第5段階:総合演習(1週間)
この順序で学習することで、前の知識が次の単元の理解を助ける構造になっており、独学時代に感じていた「点と点が繋がらない」という問題が解消されました。
モチベーション維持に課題がある人

一人での学習継続に不安がある方も通信講座が適しています。ネットワークスペシャリスト試験の合格率は約14%と低く、長期間のモチベーション維持が合格の鍵となります。
通信講座では、定期的な確認テストや進捗管理機能があり、学習の達成感を得やすい仕組みが整っています。私の場合、週次の確認テストで自分の理解度を客観視でき、苦手分野の早期発見につながりました。また、質問サポートがあることで、分からない部分を放置せずに済み、学習の停滞を防げました。
ただし、通信講座にも注意点があります。費用は5万円から15万円程度と独学の参考書代(2万円程度)と比べて高額になります。また、講座のペースに合わせる必要があるため、自分のペースで進めたい方には向かない場合もあります。
※1 OSI参照モデル:ネットワーク通信を7つの階層に分けて標準化したモデル
※2 TCP/IPプロトコル:インターネットで使用される通信規約の集合
独学のメリット:自分のペースで深く学べる体験談
独学でネットワークスペシャリスト試験に挑戦した私の経験から、独学の最大のメリットは「自分のペースで深く学べること」だと確信しています。実際に私は2022年10月期の試験に向けて約8ヶ月間の独学期間を設け、平日は2時間、休日は5時間の学習時間を確保しました。
理解度に応じた柔軟な学習時間配分
独学の大きな利点は、苦手分野に時間をかけられることです。私の場合、TCP/IPプロトコル(※インターネット通信の基本となる通信規約)の理解に苦労し、この分野だけで全学習時間の30%を費やしました。通信講座であれば決められたカリキュラムに従う必要がありますが、独学なら「OSI参照モデル」の各層の動作を完全に理解するまで、何度でも同じ箇所を学習できます。
具体的には、パケットキャプチャツール「Wireshark」を使った実践的な学習に3週間を費やし、理論だけでなく実際の通信データを観察することで、午後問題で問われる「なぜそうなるのか」の理解が深まりました。これは通信講座の決められたスケジュールでは難しい学習方法です。
興味のある分野を深掘りできる自由度
独学 ネットワークスペシャリストの学習では、自分の興味に応じて学習の深度を調整できます。私は無線LAN技術に特に興味があったため、試験範囲を超えてWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)の最新技術まで学習しました。この「オーバーラーニング」により、午後II問題で無線LAN関連の問題が出題された際、他の受験者よりも圧倒的に有利な立場で解答できました。
実際の学習データを見ると、以下のような時間配分で進めました:
学習分野 | 標準学習時間 | 私の実際の学習時間 | 理由 |
---|---|---|---|
TCP/IP基礎 | 40時間 | 72時間 | 苦手分野のため重点的に |
無線LAN技術 | 20時間 | 45時間 | 興味があり深掘り |
セキュリティ | 30時間 | 25時間 | 既存知識があったため効率化 |
コストパフォーマンスの高さ
独学の経済的メリットも見逃せません。私が使用した教材費は合計で約15,000円(参考書3冊、過去問集2冊、模擬試験サービス)でした。一方、大手の通信講座は平均で8万円〜12万円程度かかります。
特に学生の方や転職を検討している方にとって、この約7万円の差額は大きな意味を持ちます。浮いた費用で実機を購入してホームラボ環境を構築し、より実践的な学習環境を整えることも可能です。
自己管理能力の向上という副次効果
独学でネットワークスペシャリスト試験に合格することで、自己管理能力と問題解決能力が大幅に向上しました。学習計画の立案から進捗管理、理解できない箇所の解決方法の模索まで、すべて自分で行う必要があります。
私は学習管理にGoogleスプレッドシートを活用し、日々の学習時間と理解度を5段階で記録しました。この習慣により、IT業界への転職後も、新しい技術の習得や資格取得において同様の手法を応用できています。

独学は確かに孤独で困難な道のりですが、自分のペースで深く学べるこの学習スタイルは、ネットワークスペシャリスト試験の合格だけでなく、その後のキャリア形成においても大きな財産となるでしょう。
独学の現実的なデメリット:挫折しそうになった瞬間
モチベーション維持の壁:3ヶ月目の大スランプ
独学でネットワークスペシャリストの勉強を始めて最初に直面する大きな壁が、3ヶ月目頃に訪れるモチベーション低下です。私自身、この時期に「本当に合格できるのか?」という不安で夜も眠れない日が続きました。
特に辛かったのは、TCP/IPプロトコルスイート※1の理解が進まず、同じページを何度読み返しても頭に入らない状況でした。周りに相談できる人もおらず、「もしかして自分には向いていないのでは?」と本気で諦めを考えた瞬間もありました。
実際に、独学受験者の約60%がこの3ヶ月目の壁で一度は挫折を経験するというデータもあります(情報処理推進機構の受験者アンケートより)。通信講座受講者の継続率が85%なのに対し、完全独学者は40%程度まで下がることからも、この時期の困難さが分かります。
午後問題の圧倒的な難易度に心が折れた日
独学の最大のデメリットを痛感したのは、午後問題の記述式対策でした。午前問題は過去問の反復でなんとかなりますが、午後問題は全く別物です。
初めて過去問の午後Ⅰを解いた時の絶望感は今でも忘れられません。制限時間90分のところ、問題文を読むだけで60分かかり、解答欄は真っ白のまま。採点してみると100点満点中15点という惨憺たる結果でした。
特に困ったのは以下の点です:
- どこから手をつけていいか分からない長文問題
- ネットワーク設計の考え方が全く理解できない
- 解答例を見ても「なぜその答えになるのか」が分からない
- 自分の解答の何が間違っているのか客観視できない
通信講座なら講師からの添削指導やポイント解説がありますが、独学では自分で正解への道筋を見つけなければなりません。
孤独感と情報不足による学習効率の低下
独学で最も辛かったのは、圧倒的な孤独感でした。分からない問題があっても質問できる相手がおらず、ネット検索だけが頼りという状況は想像以上にストレスでした。
特に困ったのは、最新の技術動向や出題傾向の変化についての情報不足です。例えば、2022年度からSDN(Software Defined Network)※2関連の出題が増加傾向にありましたが、古い参考書では対応できず、自分で情報収集する必要がありました。
また、学習計画の修正タイミングも分からず、非効率な勉強を続けてしまいがちです。私の場合、苦手分野のルーティングプロトコルに2ヶ月も時間をかけすぎて、他の重要分野の学習時間が不足する事態に陥りました。
通信講座受講者なら講師からの学習アドバイスで軌道修正できますが、独学では気づいた時には手遅れということも珍しくありません。実際、私は模擬試験で初めて自分の学習バランスの悪さに気づき、残り1ヶ月で慌てて計画を見直すことになりました。
※1 TCP/IPプロトコルスイート:インターネットで使用される通信プロトコルの集合体
※2 SDN:ネットワーク制御をソフトウェアで行う技術概念
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